◉名取市/秀麓齋
東日本大震災 「三一一観音」
三・一一(みいい)観音は、真東を向いて建っている。彼岸の中日には観音様の目の前から太陽が昇り、真西に沈んでいく。亡くなった方々が西方浄土に行くようにとの願いが込められている。
名取市の内陸にある秀麓齋のすぐそばを流れている名取川と高舘川は、名取市内を下り海へと流れ込む。檀家が11名犠牲になり、ひとりはまだ見つかっていない。ふたりは避難誘導中に亡くなった警察官だった。亡くなられた方々すべてを供養し、この記憶が薄れないようにと、すぐに太平洋を見渡せるこの場所に観音様を建立した。だから案内板の死者・行方不明者数も、当時発表されていた2万4︐000人のままになっている。
昨年3月に、八戸から沿岸部に沿って、被害の大きかった地区を読経・供養して回った。報道などでもそうだが、人々の意識や関心が極端に薄らいでいるのを感じている。忘れるから人間は生きていられることもあるが、こうして形に残しておけばいつまでも忘れないと考えて建立した。慈しみの眼ですべての人々を“いだき、かかえ”守ってくださる観音様に、より多くの人が訪れ御霊が安らかであることを祈って欲しいと思う。
伊達家ゆかりの寺でもあり、伊達政宗公の祖父・第14代稙宗公、父・第15代晴宗公の位牌が安置されている。