◉上閉伊郡大槌町/江岸寺
江岸寺の梵鐘

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 鐘が溶けるということは、約1︐100℃だったということだ。大槌は3日3晩、火事で焼き尽くされたような状態だった。今、江岸寺のあった場所には仮設のプレハブの本堂が建ち、周囲では盛り土が進められている。
 お寺は津波の避難場所になっていた。あの日も約100人が避難して来た。さらに上の中央公民館まで上がるよう促したが、約30人が境内や本堂に残り、そこを津波が襲った。海からの波と、溢れた川の水が合流し、上に避難して見ていた人たちによると、ここで渦を巻いていたという。現住職も当時本堂の中におり、流されたが助かった。当時住職だった父親と、跡継ぎの長男も流され、行方不明になった。
 慰霊碑はまだない。焼けた杉の木で作った一周忌と三回忌の供養塔は、盛り土が始まった時に片付けた。だからここにあるのは、津波到達地点を示す碑と、熱で溶けた鐘、そして全国の方々から贈られた梵鐘である。「今は工事の音ばかりだから、それに負けないように好きなように叩いてけろ」と住職は言う。盛り土と周囲の斜面の工事が終わったら、まずはお墓の再建、次に本堂、それから鐘楼を造る。東京オリンピックの頃までには、お墓の再建を終わらせたいと考えている。鐘楼が出来る頃には周囲にも家が建ち、鐘がうるさいと言われるようになるかもしれない。そうなればいい、とも思う。

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