◉南相馬市/同慶寺
東日本大震災被災物故者供養塔
平成28年7月12日に避難指示が解除になった南相馬市小高区。元々の人口は1万3︐700人だが、まだ700人くらいしか帰って来ていない。街に出れば巨大な猪や猿の集団に遭遇する。非常時はいまだに続いている。
震災前から原発のことを勉強していたので、どうなると危険なのかはよくわかっていた。震災直後から家族とともに福井県に避難し、すぐに寺に帰ってきた。沿岸部の捜索は、3月12日には打ち切りになった。すぐに救助に行けば生きていた人もいたかもしれないと思う。その頃の葬儀は火葬場でするしかなかった。当時人が住める最前線だった原町区の岩屋寺に泊まり、5日おきに福井とお寺を往復する生活だった。だんだん寺にいる時間のほうが長くなり、その生活が約2年間続いた。
大切なことを人任せにしてきたから、こんな状況になってしまったと感じている。被害者であると同時に加害者の一員であるという意識と反省を持って、みんなで学んでいかなければならない。避難指示が解除される前から、毎月1日と15日は檀家さんに集まってもらって境内の掃除を続けている。バラバラになった人たちが小高に集まり、故郷を失いかけている状況で、同じ苦しみや悲しみを抱えている人たちと会って話すことが癒しになっている。
立ち入ることのできない双葉町にあるお寺も管理しているためワンシーズンに1度ほど草刈りなどに訪れている。高線量地域だ。人が住まなくなった場所は自然の力が圧倒的に強く、まるで宮崎駿監督のアニメの世界のようで、ある意味美しいとさえ感じる。